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 ロンドン、パリのガイドブックやネットの情報で、
「ここはおいしいから絶対におすすめ!」と、よく書かれていますが、
 これは現地に住んでいる人や、長期滞在者向けの情報だな、と思います。
 あまり時間のない旅行者は、なんとかカフェのすてきなブランチ! 
 なんて、雑誌の写真に憧れて、カフェだのビストロだのをピンポイントに訪ねる
 必要はないし、時間のムダです。
 もちろん、どうしてもその店のパリいちばんと評判のクロワッサンを食べたい!
 とか、三ツ星レストランで一度、ごちそうを食べたい! というのであれば、
 ガイドブックをあてにするほうが、効率的でよいでしょう。
 わたしも、どうしても某有名ホテルのアフタヌーンティーに行ってみたくて、
 日本から予約していきました。
 しかし、「パリいちばんと評判」「三ツ星」「ここには個人的に興味がある!」
 というわけでもなく、
 「ここのカフェに行ったら、とってもパンがおいしかった!」というだけの、
 旅行者からの投稿にふりまわされるのは、ばかばかしいです。
 投稿者が、よほどのグルメであるとか、現地に住んでいるのなら別ですが、
 たいていは、「パリ8日間の旅」などで、その旅の間にはいったカフェは3件だけ、
 という、うすーい体験の中から書いているわけでしょう。

 ですから、本当に大事なのは、「ここは美味しい」という情報よりも、
「ここはまずい!」「ここはサービスが悪い!」という情報だと思います。
 そこさえ避けるようにすれば、失敗の数はへらせますからね。

 そんなわけで、わたしの食い意地日記は、
「ここはおいしいから、絶対に行ってみてね!」という情報ではなく、
「ここにはいったけれど、おいしかったから、はいっても失敗はないですよ」とか、
「値段のわりにはたいしたことがなかったな」という情報をのせていくつもりです。
 

 ロンドン郊外のハンプトンコート宮殿は、観光の穴場です。
 巨大な宮殿の中のほとんどが公開されているうえに、庭園も広大で、一日いても
 飽きません。
 観光客がそれほど多くないのも魅力です。
 何度もロンドンに行って、もう見るところがない、というかた。
 電車でたった30分のところにある、このお城はいかがでしょうか。
 この庭園にレストランがあるようですが、わたしたちは城内のカフェにはいりました。
 ホームメイドのケーキがおいしそうだったので、アップルクランブルパイと、
 ヴィクトリアンサンドイッチケーキを注文し、母と半分こして食べました。
 この瞬間でした。わたしが「イギリスのお菓子はすげーうまい!」と知ったのは。
 エリザベス一世、という名のこのカフェは、お城の部屋をそのまま使っているので、
 タイムスリップした気分も味わえます。
 あ、でも、ロココ〜という感じのゴージャスな部屋ではなく、
 中世風の、どこか修道院を思わせるお部屋です。

 せっかくロンドンに行くのだから、伝統的なお料理を食べたい、と思うのは人情。
 ヨークシャープディングがうまい店はローストビーフもうまい、のだそうです。
 そんなわけで、ここは間違いないよ、と旅エッセイに書かれていたお店から、
 レストラン<ルールズ>を選びました。
 ここはたぶん、どのガイドブックにものっている有名なお店です。
 ロンドン最古の高級レストラン、とあったので、それなりにドレスアップして
 やや緊張して出向いたのですが、おフランス高級レストランとは違って、
 もう少しくだけた雰囲気の場所でした。
 あまりにもラフな格好でははいりづらいですが、それほど気張らなくても
 会社帰りのスーツ姿くらいで大丈夫です。
 けっこうビジネスマンとかおじさんが多かった。
 お肉はなかなかおいしかったです。味つけも、洋食屋さんぽくて日本人にやさしい味。
 つけあわせにほうれんそうとかたまねぎがはいっているはずだが、と思っていたら、
 肉の下じきになって、ぐでぐでに煮込まれていました。
 ヨークシャープディングは、お店によって味も形も違うようですが、
 ここのはフォカッチャとかナンに似ていました。形もピザのような巨大なものでした。
 熱いうちは、そのまま食べてもおいしいけど、たぶんさめたらダメでしょう。
 いっしょについてきたポテトグラタンが、いももバターもおいしかったです。
 ただ、量がものすごく多いので、前菜をとったらきついでしょうね。
 前菜だけでも、メインくらいどーんと量が多かったです。(隣の人の皿を見て驚いた)
 こちらのホームページから予約もできます。
 ガイドブックには日本語メニューがあると書かれていましたが、ありません。
 ホームページに店のものと同じメニューがのっているので、
 あらかじめ調べていくことはできます。

 ルールズ http://www.rules.co.uk/
 日本語  http://www.rules.co.uk/intertnl/welcj.html

 テディベアを買いに、ロンドンでハロッズに行きました。
 いやー、くま天国です。
 くまファンは、一度、のぞいてみてください。
 メリーソート、シュタイフ、ハロッズのくまと仲間たちだらけ。
 ハロッズはフードホールが有名なので、見物に行きました。
 驚いたのは寿司売り場の日本人売り子さんのキモノでした。
 正気の日本人は絶対着ないであろう、すさまじい柄でした。
 あれは日本人にむけた衣装? じゃないよね。やっぱり。
 シーフードのイートインコーナーで、わたしはフィッシュ&チップス、
 母はロブスターのグリルを食べました。
 揚げ物なのに、全然、胸焼けしなくて、とてもおいしかったです。
 かなり大きかったのに、ぺろっと食べてしまいました。
 ロブスターもおいしかったそうな。
 ちょっとお値段は張りますが、フィッシュ&チップスを食べるチャンスが
 なかった、というかたは(わたしがそうでした)、ここでどうぞ。

        Harrods http://www.harrods.com/

Harrods Seagrill http://www.harrods.com/restaurants/sea_grill.html 

 ロンドン塔はかなり広いです。
 有名な大がらすがどれか探すのはたいへんだろうな、と思っていたのですが、
 いざ行ってみると、やけに羽の色つやのいい、巨大なからすが何羽かいました。
 ほかにも普通のからすはたくさんいたのですが、「こいつらに違いない!」と
 ひと目でわかる、恐ろしさでした。
 テレビゲームの、最初のほうに出てくるざこモンスターに、からすがいますが、
 まさにそういう感じ。
 あれはもうからすじゃないです。
 化け物です。
 えさは馬肉をもらっているそうな。
 ロンドン塔を半分くらい回って、「疲れたねー、お茶を飲みたいねー」と
 いうところに、ティールームがちゃーんと用意されているのでした。
 朝いちばんに行ったせいで、ここにはいったのもわたしたちがいちばんのり。
 ホームメードのケーキが、手つかずのままで、たくさん並んでいたので、
 なんだか嬉しくなりました。
 チョコレートケーキと、サンドイッチを買って、母と半分こしました。
 これでもう、かなり満腹なのだった。
 サンドイッチはまあまあ。(いや、おいしい部類だと思いますが)
 ケーキは、べりべりべりでりしゃす! でございました。

 アフタヌーンティーに行ってまいりました。
 ロンドンのブラウンズホテル。
 大人気で、予約をしなければだめ、とガイドブックにあったので、
 ネットで予約をしていったのですが、混んでいない時だったのでしょうか。
 けっこう、空席がありました。
 サンドイッチ、スコーン、エクレアやタルトなどがのった3段がさねの
 お茶菓子タワーを前に、お茶をいただきます。
 そのうち、ケーキがのったお盆を持って、ウエートレスさんが
 回ってきて、好きなだけ食べることができます。
 けっこうおなかいっぱいになります。
 さて、味ですが、正直言って「これで5000円かー」という感じでした。
 まずくはないけど、安くてもっとおいしいところはあるぞ。
 雰囲気を味わうために、一度くらい体験するのはいいですが、
 そうそう期待しないほうがいいかな、と思いました。
 サンドイッチのパンには香草が焼きこんであるし、
 チーズはちょっと独特の匂いがするし、
 マフィンはあまりにも洗練されていて、素朴なおいしさが半減しているし、
 おしゃれすぎて、かえって英国菓子の魅力がそこなわれている気がします。
 エクレアなどは甘過ぎて、ひと口かじっただけで、おいてしまいました。
 ロンドン塔のカフェや、村のパン屋さんの喫茶コーナーのほうが、
 わたしはおいしい、と思いました。
 でも、ほかの有名ホテルのアフタヌーンティーは、また違うかも。

 よく、イギリスのお茶はおいしい、と言われます。
 わたしも、それはそれは期待して行ったのですが、いざ、飲んでみると、
「別に、普通のおいしいお茶じゃーん」という感じでした。
 ところが、日本に帰ってくると、日本で飲む紅茶がおいしくない。
 そう。一度、おいしいものに慣れてから、そうでもないものに戻ると、
 味の違いがはっきりわかるものなのでした。
 まあ、日本でもおいしい紅茶を飲ませてくれるお店はありますが、
 それは、よくよく気をつけて、お茶のいれかたをマスターすれば、
 おいしいお茶がいれられる、という感じですよね。
 イギリスでは(というか、ロンドンしか知りませんが)
 どんなに雑ないれかたをしても、おいしいお茶がいれられるのです。
 だって、セルフサービスのカフェテリアで、ティーバッグの上から
 じゃーっとお湯を自分でそそぐだけで、すごくおいしいお茶になるんですよ。
 うらやましいですねえ。
 

 むこうで、トワイニングの冷たい缶紅茶を飲みました。
 缶といっても、紙の筒でできています。
 いろいろなフレーバーティーがあったのですが、中にグリーンティーとフルーツの
 組み合わせのものがあって、ぶっとびました。
 んー、これは、日本では飲めないであろう。
 と、「マンダリン&グリーンティー」を選びました。「みかん入り緑茶」です。
 おそるおそる飲んでみたら、これがとてもさわやかでおいしい!
 みかんはひょっとして皮ごと使っているのでしょうか、みかんの皮のような
 香りもしました。
 砂糖がはいっていないので、みかんの甘味だけで、後味もすっきりしています。
 日本にも、これ進出しないかな〜。
 絶対、はやると思うんだけど。
 ロンドンに行くことがあったら、トワイニングの缶紅茶をためしてみてね。

 ロンドンとパリを結ぶユーロスターという超特急列車は、ファーストクラスだと
 食事が出てきます。
 食事つきで乗務員のサービスもよいのなら、セカンドとの差額分の元はとれるな、と
 日本でファーストを予約していったのですが、「要するに機内食のような食事だ」と
 あとから聞かされて、後悔していました。
 ところが、なんということでしょう。
 ユーロスターのお料理はおいしかった!
 どかん、と給食がいきなり置かれるように、なにもかもいっぺんに出されるのではなく、
 最初に前菜が、次にメインが、最後にコーヒーが、と、順に運ばれます。
(デザートは前菜といっしょに、最初からトレーにのっています)
 そのあと、おいしいチョコレートを山盛りにしたかごを持ったスチュワードが
 通路を何往復もするので、チョコレートもらい放題。
 ドーバー海峡をこえる3時間の旅は、まったく退屈することなく、あっという間に
 すぎました。

 お金に余裕があれば、ユーロスターはファーストがおすすめです。

 ロンドンではあんなにおいしかった紅茶なのに、
 パリに渡ったとたん、とんでもない味になりました。特にホテルの朝食だ!
 以前、カップの中身をひとくち飲んだ紳士が、
「キミの出してくれたこれが、もしもコーヒーなら、紅茶にかえてくれ。
 紅茶なら、コーヒーにかえてくれたまえ」
 というジョークを見たことがありますが、まさに、そんな味。
 本当に、最後の日まで、紅茶かコーヒーかわからない、というしろものでした。
 まさかブレンド?

 パリのカフェで飲む紅茶も激まずだったので、胃が悪くてあまりコーヒーを飲めない
 わたしは困っていたのですが、ある時、「こんなにチョコがうまいんだから、
 やはりショコラ(ココア)を飲むべきであろう」と思いついて以来、ずっと
 ショコラを飲み続けていました。
 パリではショコラだ!

 パリの地図は、だいたい左側が凱旋門のあたりで切れていますが、
 もうひとつ左の駅、ポルトマイヨーの前にあるホテルに泊まりました。

 メリディアン・エトワール ホテル

 http://www.lemeridien-etoile.com/

 
 ここは地下鉄一本で、凱旋門、ルーブル、シテ島に行けて便利なのです。
  
 このホテルの真ん前に、パレ・デ・コングレという大きな建物がありまして、
 中は大きなショッピングモールになっていました。
 「アンジェリーナ」も「ポール」もあるので、
 わたしがパリの地図に一生懸命につけた印はなんだったの、という感じ。
 ホテルのとなりのビルに、みーんなはいってるんですものねー。
 便利だけど。
 さらに、ちょっと歩いたところには「フロ」もあるのでした。
 ここも行きたいなーと、地図にチェックしていたので、近所に支店があるのを見て
 腰がくだけました。
 
 ところで、ちょっと豆知識。
 凱旋門の最寄り駅はシャルル・ドゴール・エトワールなのですが、
 地上にあがる階段が多すぎて、ここでおりるのはちょっとわかりにくいのです。
 もうひとつとなりのジョルジュ・サンク駅でおりると、階段をあがってふりむけば
 すぐそこに凱旋門が見えるので、こっちのほうが便利ですよん。

 パリのガイドブックには、「あそこのカフェがおいしい!」とありますが、
 わざわざおすすめの場所に行かなくても、とおりすがりのカフェで
 十分にたのしめます。
 
 ノートルダム寺院の前のカフェにはいって、サンドイッチを頼みました。
 ギャルソンが、「ふたりで食べるなら、切ってあげるよ」と、
 一本の長いフランスパンで作ったハムサンドを、半分に切ってくれました。
 手作りらしいマヨネーズをたっぷり塗って食べると、本当においしい。

 また、オペラ大通りをふらふらと歩いていく途中でおなかがすいたので、
 てきとうにはいった「マドレーヌ7」というカフェで、クレープとタルトを
 頼み、母と半分こしました。
 どちらも大成功のおいしさ!
 足を棒にして、わざわざガイドブックのカフェをめざさなくても、
 そこらじゅう、おいしいものであふれている。と、実感しました。

 ところで、クレープは、「ショコラ」と「ミエル(はちみつ)」がおいしかったです。
 むかし、「通はシュックル(おさとう)を頼むのさ」と言われて、
 クレープにさとうをぶんまいただけのを、通ぶって頼んでみましたが、
 これははずれでした。

 パリの街を歩いていると、レストランの外側に氷が山積みにされて、
 魚や海老や牡蠣が並べられている、海鮮料理屋さんがたくさん眼につきます。
 調理場、というか、生の魚や貝を貯蔵したり、さばいたりする場所が
 お店の外なので、なまぐささが店内にまったくないのは、いいアイディアですが、
 店員さんは寒いでしょうね。
 お肉を食べたくない時には、こういうお店にはいると、おいしいお魚を食べられます。
 なんたって、生牡蠣のお店ですからね。魚介類は新鮮。
 でも、あたるのが恐くて、牡蠣を始めとしてナマものは食べられませんでした。
 わたしはマグロのステーキ。母はロブスターまるごと一匹。
 母はロンドンでもロブスターを食べたのですが、パリのほうがおいしい、と
 言っていました。
 マグロのステーキは、あっさりしたお肉のようで、ソースもおいしかったです。
 おしょうゆを携帯していると、和食が恋しい時に、こういうお店で
 焼き魚や焼き海老を注文できて、便利です。

 お正月にパリに行く人も多いでしょうが、
 となると、やはりルーブル美術館にも行かれるのでしょうか。
 わたしたちも、最後に時間があまったので、ルーブルに行ってきました。
 なんて、贅沢なことを言っているのは、むかし、一度行ったことがあるから。

 ルーブルのカフェといえば、回廊に作られたカフェ・マルリーが有名ですが、
 話を聞いた限りでは、「別にふつーのカフェだけど、値段は高い」らしい。
 
 わたしたちは館内を歩いている間におなかがすいたので、
 3階にあるカフェにはいりました。
 ここはすばらしい穴場でありました。
 すいてたし。

 ルーブルの中庭には、有名なガラスのピラミッドがありますが、
 あれといっしょに記念写真を撮ろうとすると、
 ピラミッド全体を入れれば人間が小さくなってしまうし、
 人間を大きめに撮ろうとすれば、ピラミッドの裾しか写りませんね。

 ところが、3階のカフェは、外にバルコニー席があるので、
 美術館の屋根近くに出ることができるのです。
 ここに立って、ピラミッドのてっぺんと記念撮影をすれば、
 美しい三角のピラミッドと、人物のアップが一枚におさまります。

 メニューは少なかったけど、おいしかったです。
 ここではクロックムッシューという、チーズとハムをのせたホットサンドを
 食べました。ま、これはどこのカフェでも間違いなくおいしいです。
 そして、チョコレートケーキをひとつ頼んだら、
 何も言わなくても、ケーキスプーンを二人分、持ってきてくれました。

 パリでも、ケーキをふたりでわけるというのは当たり前なのか。
 それとも、日本人観光客(の女の子)が、ケーキを分け合う習慣を伝えたのか。

 謎でしたが、ケーキは日本人にとってはかなり巨大だったので、
 わけて正解でした。
 あまり甘くなくておいしかったです。

 お正月にパリに行く人も多いでしょうが、
 となると、やはりムーランルージュに行く人もいらっしゃるでしょう。
 
 わたしたちも行って参りました。
 よくツアーなどで「ムーランルージュのかわりにリドになる場合もあります」
 と書かれている場合は、リドになる可能性が大です。
 今回は、確実にムーランルージュに行きたかったので、
 ネットで直接もうしこんで、個人でチケットをとりました。
 その顛末は、ホームページの旅行記コーナーでご紹介しています。

 ムーランルージュのディナーショーは、食事とショーのいちばん高いコースでも
 日本のディナーショーの半額くらいです。
 今回の旅行では、レストランでコースディナーという計画は入れていませんでしたが、
 ここのお食事は、ミシュランで星をとったシェフによるものだそうで、
 とてもおいしかったです。
 デザートの「プチ・ムーランルージュ」ってなんだろう、と思っていましたが、
 これはムーランルージュの形のシャーベットでした。
 おいしいけど、ケーキを食べたかった。

 ところで、ロンドンでもパリでも、コースの前菜の選択肢って、
 フォワグラかスモークサーモン、というのが多いですね。
 なんだかしらないけど、スモークサーモン、食べまくりでした。
 とってもおいしいですよ。


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