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 イギリスでお茶の時間に出てくる「クリームケーキ」というのは、
 どんなものなのでしょうか? という、質問のおたよりをいただきました。

 わたしは単純にクリームを塗ったケーキのことだろう、と思っていたのですが、
 念には念をいれて、辞書をひいてみました。
 が、どの辞書にも「クリームケーキ。菓子」とあるだけで、辞書としての役割を
 果たしていないのでした。

 生クリームやチョコクリームを塗ったケーキを、クリームケーキと総称するようですが、
 日本人が考えるような(ショートケーキとか)とは違うものだと思います。

 検索すると、ある英々辞書で「クリームのフィリングがはいったケーキの一種」とありました。
 してみると、「萩の月」のように、中にクリームがはいったお菓子だろうか、
 と思ったのですが、ついに、画像を見つけました。

 これです。

 http://www.freefoto.com/pictures/food_and_drink/cakes/index.asp?i=9

 http://www.freefoto.com/pictures/food_and_drink/cakes/index.asp?i=51

 田舎のパン屋さんで売っていそうなお菓子ですね。

 ということをワタクシのホームページの掲示板に書いたら、
 栗坊 さまから、レスをいただきました。

 「私はイギリスのクリームケーキなるものを知らないのですが、
 アメリカでは、この形なら、long john creamって名で呼ばれてる
 ドーナツの一種です。」

 さらにさらに、しいこ さまのレスが。

 「イギリスではクリームが沢山使われていればなんでもクリームケーキになるんだそうです。
 かなりアバウトな分類で笑ってしまうほかないですよね。
 スーパーマーケットで売っているクリームケーキは、この写真のようなものが多いと思います。」

 ご質問とレス、ありがとうございました。とりあえず、実物を見て、食べてみたいよう。

「イギリスのお茶の時間に出てくる、クリームケーキとはなんぞや?」
 という質問に、掲示板でお答えをいただいた、と先日ご報告しましたが、
 そこからさらに話題が広がっております。
 しかも、ばりばりのプロ翻訳家のかたがたからのお答えが。
 

ますはスコットランド在住の翻訳家、杉本優さんから。

苺ショートケーキってイギリスで見た覚えがないのですが、
あの手のケーキ(いわゆる日本で「ケーキ」と言った時に想像するケーキ)は、
こちらでは「ガトー」と呼んでるようです。
どういう定義になってといるのか私もよくわからないのですが、
ガトーは食後のデザートに出すもの、
クリームケーキはお茶の時に食べるもののようです。

クリームケーキという言葉から連想する食べ物とというと、
クリームドーナツの他、エクレアとかシュークリーム(シューバン(choux bun)という名で売っています。
ちなみに日本ではシュークリームやエクレアにカスタードが入ってますが、イギリスでは生クリームです)とか
ラムババ、焼いたメレンゲに生クリームをはさんだもの(名前忘れた)など、
スポンジケーキをベースにしていないものが多いように思います。
スコーンに生クリームをはさんだものや
アメリカン・マフィンに生クリームをのせたものなども
クリームケーキとして売ってます。
イメージ的には「ケーキ」と「菓子パン」の中間くらい?
売ってるのもパン屋さんやスーパーのパンコーナーのとなりです。
「菓子パンに生クリームをのせればクリームケーキ」かな?

 

そして、やはり翻訳家の浅羽莢子さんから。

優さんがお書きのガトーは、フランス語のgateauです。
早い話が、いわゆるケーキを連想させる形(高さのない円柱状)に焼かれ、
チョコレートやら何やらを塗ったりはさんだりしていろいろ飾り、
切り分けて食べるものです。
同じ形でも、チョコレートやクリームで飾らないもの
(フルーツケーキやキャロットケーキなどいろいろありますが)はガトーとは呼びません。
フランス風の生菓子で生クリームを使わないものも、形に関係なくガトーと呼ぶこともあるかもしれません。
ガトーというと全体に、甘くてべとべとのにちゃにちゃで、フルーツケーキなどと違って日持ちがしないという印象があります。
また、バースデーケーキなどマジパンと砂糖衣で外側を固めたものもガトーとはあまり呼びません。
(「ガトーが指すもの」とは、イギリスにおいてという意味です)

あと、優さんがお書きの「ラムババ」は日本でいうサバランとほぼ同じものですね。
細かい違いがあるのかもしれませんが。

そして、へぼへぼ翻訳家の中村有希さんから。

とりあえず見つけたのがこのページ。下のほうにあります。
Rumbabaです。
ほかのページをいろいろ読んで総合すると、
「マッシュルームの形をしたサバランをラム酒にひたしたお菓子。生クリームをそえて出すこともあり」
というお菓子のようですが、まちがってます?

 
   

スコットランド在住の翻訳家、杉本優さんからのフォローです。

こんなにおしゃれになってるのは見たことないけど、確かにこのお菓子です。
このマッシュルームのかさ部分を水平に切って、生クリームをはさんだ状態で売っているのをよく見かけます。

ガトーについては浅羽さんにフォローいただいた通りで、
>ガトーというと全体に、甘くてべとべとのにちゃにちゃで、フルーツケーキなどと違って日持ちがしない

がまさに的確な定義。まあ「ガトー」も「ケーキ」もイギリスではやたらと甘いのが普通ですが、柔らかくて日持ちがしないという点は日本の「ケーキ」の定義とほぼ重なるのではないでしょうか。

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