おまけのホームページあとがき。
本書は20年前に書かれたものが、昨年、多少の手直しを加えて再出版されたものです。
有名な話で、このホームページやメールなどでもよく質問されることなので、例の盗作問題についてちょっとここでお話しておきます。
作者は「あのベストセラー」は自分が20年前に書いたこの作品を盗作したものだと、裁判を起こしたそうですが、私が読み比べたかぎりではあまり似てません。
「ダ・ヴィンチ」、「手稿」、「秘密結社」を使った三題小ばなしをふたりの作家が作った、という程度の似かたです。盗作問題に興味のあるかたは、ぜひ読みくらべてみてね(宣伝)。
なかなかおもしろく訳せたと思うので、冒険ものが好きなかたに読んでいただければ幸いです。(ミステリを期待されるとちょっと違うかも。謎解き要素はいっさいありません)
訳している間はけっこう楽しかった。自分で言うのもなんですが、イタリアに行きたくなってしまいました。ところで、ここからはちょっとした裏話。
再出版までの20年のブランクは長かった。その間に、ピサの斜塔の傾斜角が変わり(倒れそうになったので、傾いているがわと反対がわを掘ることで、ちょっと傾斜を戻すという大工事が行われた)、『最後の晩餐』の修復も終わって、物語の舞台の事情が大幅に変わってしまったのです。
だったら20年前の物語としてすなおに再出版してくれればいいですが、通貨単位がユーロになってたり、ニューヨークのテロ事件に言及してたりと、どう考えても21世紀の物語に生まれ変わっている。
なのに、さっきも言ったピサの斜塔の傾斜角も、『最後の晩餐』も、20年前の状態のままなのでした。くそ〜、なんであたしがなおさなきゃならんのだ。
その後、校閲さんがもっとたいへんなことをひっかけてきました。
「あの〜、登場人物のプロフィールもそのままなので、年齢が20歳ずれてしまうのですが」
慌てて確かめると、ほんとだ。70そこそこの社長が、このプロフィールどおりに計算すると、90過ぎになってしまう。ええ〜、これもあたしがなおすの〜!
しかし、プロフィール部分はえんえんと続き、物語にばっちりくいこんでいるので、これを完璧になおすのは不可能です。しかたがないので、登場人物の年齢をあいまいにし、プロフィール中で修正のきく部分はなおし、どうしようもない事項はカットする、という手段で、どうにかつじつまをあわせることができました。(と思う。おかしなところがあっても、つっこまないで〜)
やれやれ。いまとなっては、よい思い出ですわ。表紙の絵は画家さんが描いてくれたオリジナルの「手稿」です。とてもきれいな表紙だったので嬉しい、と、担当さんに言ったら、画家さんに何度も描きなおしてもらったそうな。どうもありがとうございます〜。