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いやな思いをした経験談(掲示板より)

最近悩んでいることがあり、どうしてもご相談にのっていただきたくて、書き込みました。
それは、翻訳者は、ただ訳すだけで、何も意見は言えないのかどうか、ということです。
編集などの段階で、冷静に判断した上で、どうしても納得のいかない箇所や、それはちょっと違う、という文に修正された場合、それでも何も言えないのでしょうか。意見はご法度、というような雰囲気が流れており、何か一言でも言ったら、「文句をつけてる」というような空気が漂い、悲しくなってしまいます。主張したら、次の仕事はない、という恐怖で身動きがとれません。どうしたら、いいのでしょうか?

>どうしても納得のいかない箇所や、それはちょっと違う、という文に修正された場合

これは鉛筆がはいっていた場合ですよね? わたしは、鉛筆のほうがいい、と思えば、それに従うというか参考にするかたちで自分の文をなおします。鉛筆のほうが、わたしのこだわりとなんか違う、と思えば、その理由を述べて、話し合い、どちらにするか決定します。

>意見はご法度、というような雰囲気が流れており、何か一言でも言ったら、「文句をつけてる」というような空気が漂い、悲しくなってしまいます。

ん〜。考えすぎなのではないでしょうか。担当編集者さんを存じ上げないので、なんともいえませんが、でも、訳すうえでいちばん考慮にいれるべきなのは、訳者でも編集者でもなく、読者です。
どうすればいちばん読者のためになるか、と考えればおのずと答えはでると思います。
編集者さんにご自分の意見を伝えるときに、「こうしたほうが読者にはよりよくつたわると思います」とひとことおっしゃってみてはいかがでしょう。少しはニュアンスがやわらかくなるかも(笑)。

>主張したら、次の仕事はない、という恐怖で身動きがとれません。

それはないと思いますよ。編集者さんも、よりよい本を作りたい、という気持ちは訳者と同じはずですから、よほど理不尽なことを言っているのではないかぎり、意見を言う訳者はありがたい存在だと思います。(中村)

そうですよね、読者を第一に考えて、というお言葉、その通りだと思います。
私も、翻訳業に就くのに長い年数を要しましたし、何より本が好きなので、「読者の目」になり訳す、というのは常に頭に置いています。
ですから、決して、自分の訳に執拗にこだわっていたり、何がなんでも自分の訳を変えない、などという気持ちは、まったくありません。
ところが、こんなことは滅多にないと思いますし、実際、私自身もこれまでに経験はないのですが、より詳細をお話しますと、校正作業の段階で、なぜそうなさったのかわからないのですが、相当数の文を、まったく全体に合わない文に変更されたり、原文を間違って解釈されたのか、ぜんぜん違う内容に変えられたのです。
冷静な目で、何度読み返しても、どう考えてもおかしく、しかも、それがあまりにも多いので、それを思い切って指摘したのですが、残念なことに、編集を担当された方は、「校正の方は、大変なベテランです」と話されただけで、終わってしまいました。それでは、あまりにも納得がいかないので、説明していただきたい、とお尋ねしたのですが、なんのお話もないまま、早数カ月がたちました。
これまでにんほんの一握りの出版社としかお仕事をさせていただいておりませんが、こういう経験は初めてです。そして、今回のことで、私のような無名中の無名の訳者は、何も言ってはいけないのではないか、という何とも言えない悲しい気持ちになってしまいました。
 いくら弱小の訳者でも、間違っているものを黙ったまま認めるのは辛いです。次の仕事は未定、コネもない、という身ですが、それは生意気以外の何者でもない態度なのでしょうか? それとも、とにかく当たって砕けろ、で、訳者の意見にも耳を傾けてくださる編集者さんに会えるよう、あちこちアタック(死語ですね・・・)したほうがいいのでしょうか?

>編集を担当された方は、「校正の方は、大変なベテランです」と話されただけで、終わってしまいました。それでは、あまりにも納得がいかないので、説明していただきたい、とお尋ねしたのですが、なんのお話もないまま、早数カ月がたちました

ここだけ拝見すると、どうもその編集者さんが、英語を読めないかたのような気がするのですが〜(笑)。でも、そういう人もいますから。
訳者にもいろいろな人がいるように、編集者にもいろいろな人がいます。次回はいい人にあたるといいな、くらいの気持ちで、ご自分をおいつめないでください。
まちがったことをしていないと思いますよ。
ときどき、わたしも「こういう理不尽なことをされた」という話を聞きますが、あまりごねて自分のエネルギーを消耗するのもなんだし、今回はもうしょうがない、と気持ちをきりかえるかたが多いようです。

>私のような無名中の無名の訳者は、何も言ってはいけないのではないか

逆です。はっきり意見をいえる訳者である、とアピールしないと、尊敬されません。

多くの編集者は、きちんと意見をきいてくれるはずです。今回の件は、よくないケースだな、とわたしも思います。(中村)

しばらく前からここを興味深く見させていただいている者ですが、校正についてお伺いしたくて書き込みしました。
私は以前は中村さんと同じようなタイプの校正をする出版社で仕事をしていましたが、そこでの仕事がなくなり、営業の末、なんとか別の出版社で仕事をすることができました。
が、そこでは翻訳原稿をテキストデータの段階で編集者が全面リライトしてゲラを出すところだったのです。そういう出版社が最近増えていることを知らなかった私が悪かったと思いますし、出版社にはそれぞれやり方があるので、そういう方法に反対するつもりはありません。
ただ、編集者が全面リライトしたものを校正することがどうしてもできないのです。どうしたらよいでしょうか。こういう場合、リライトされたものを事後承認するのが正しいやり方なのでしょうか。全部、自分の訳に戻すわけにもいきませんし。波風を立てずに乗り切る方法をご教示ください。

リライトしてしまう、ということは、どこをどうなおされたかわからない、ということでしょうか? それはちょっと困るかも。わたしはそういう経験がないので、わかりませんが。

それとも、校正することができない、というのは、編集さんに遠慮されているのでしょうか? 遠慮はいらないと思いますよ。ここはやっぱり気持ち悪い、と思ったら、遠慮なくなおしたほうがいいです。ただ事後承認する、というのは違うと思います。リライトされた部分のほうが出来がよくなっていたら、「ありがとう〜」とそのままのっかればいいだけで(笑)。
ただ、どうしても心配なら、電話なりメールなりで、「ここはどうしてこうなおされているのですか」とか「こういう理由でもとに戻したいのですが」とか、編集さんとやりとりされてはいかがでしょう。波風が心配なのでしたら、それがいちばんいいと思います。(中村)

この掲示板の前の方のページを見たところ、私と同じケースと思われる方の書き込みがありました。それに対する中村さんのご返事、理不尽なことをされても、今回はしょうがないと思ってあきらめる、というのが大変参考になりました。また、私と同じ思いをして悩んでいる人がいるとわかって、ちょっと、ほっとしました。

持ち込み経験(掲示板より)

実は、最近、とても面白い原書を見つけたので、思い切って、初の「持ち込み」に挑戦しようかと思っているのですが、それで、何度も持ち込みをされていらっしゃる中村さんに、アドバイスいただけたらと思いまして、思い切って書いています。

実は、今回持ち込みしようと思っている作品はシリーズもの(3部作)の第一作目で、最終巻まではまだ出版されていないとのことなのです。
すでに出版されている続編は、本国でとても評判になっているようなのですが……。
シリーズものの場合、持ち込みのタイミングはどうしたらよいのでしょう?
シリーズが全巻出版されてからまとめて企画書を書くか、または、完結していなくても、既刊の評価が良ければ、早いところ持ちこんだほうがよいのでしょうか?
あまり待っていて、そのあいだにどこかに版権を取られてしまった、というのも困りますし……。
中村さんは、これまでシリーズものの持ち込みを数多くなさっているとのことですが、
どのように判断してこられましたか? これまでの経験談など伺えたら幸いです。

続編は出ているのですよね。では、最初の2冊を読んでみて、おもしろければ2冊分のレジュメを書いて、企画として持ちこんでみてください。(2冊目でこけていなければ)

わたしはシリーズものの場合は、とりあえず最初の2、3冊でこけていないもの、という基準で持って行きました。1冊目がおもしろくても、2冊目でずっこける、というのが、けっこう多かったので。最低でも2冊はないと、シリーズになりませんからね〜(笑)。理想を言えば、3冊目までおもしろい本を確保できるとよいとは思いますが、3部作なら、2冊も読めば作家の力量もわかるでしょうし。
出版社への接触は早いほうがいいと思います。(中村)

その後、勇気を振り絞って持ち込みに挑戦しましたが、結果は……、すでに
他の出版社が版権を取得していることがわかり、あえなく玉砕ということに
なりました。
割とすぐに結果が出たので、「待たされなくて良かった」とも思いますが、
きっとこれから、じわじわとショックが押し寄せてくるのかなぁ、と思ったりして。

今回思ったのは、「原書はハードカバーのうちに読んでおかなくちゃだめだな」と
いうことでした。良い作品は、ペーパーバックに落ちてからでは、遅いんですね。

他の出版社が版権を取得している、ということは、プロ編集者もよく経験していることなので、そんなにおちこまないでくださいね。むしろ、ほかの出版社もほしがるような、よい作品を自分は選ぶことができた、という、ご自分の選球眼をほめて、自信を持ってください。
 たしかに、ハードカバーで出た本というのは、ハードカバーのうちに読んでおかないと、すでにつばつけられている可能性は高いです。それどころか、これは、と出版社が力を入れている本の場合は、すでにタイプ原稿の段階で、リーディングに回されていたりいます。
 でも、ペーパーバック落ちしてからも、なぜ、いままで見逃されていた? という作品もありますし、ペーパーバックオリジナルの本もたくさんありますし。一概にはいえないのも、また難しいところですよね〜。(中村)

字幕のお仕事について(掲示板より)

日本語字幕や吹き替えのセリフを作る仕事に興味があります。
この仕事をしている人は、別にも、例えば、洋書の翻訳であったり、
また別の仕事をして生計を立てているんですかねえ?
映画のdvd化や映画産業が急成長していますが、
もう人は足りているんですか?
またそういった仕事をもらうには、何かしらのキャリアが必要なんですか?

こんにちは〜。字幕翻訳は畑違いなので、事情はわかりません。
でも、以前、ちらっと聞いた話では、仕事はとても多い、でも、能力の信頼できる人が少ないから、その人にばかり仕事がどどっと押し寄せる、らしい。
いまはテレビゲームやDVDの仕事がけっこう多いみたいです。
かなり締め切りが厳しいことは知っていますが、収入に関してはわかりません。数をこなせば、字幕一本でいけるのかもしれませんが。
優秀な新人は求められているはずですよ、絶対数はたりない、と聞きましたから。(中村)

映像翻訳をメインにしている者です。
映像翻訳に関する質問があったので、僭越とは思いながらも出てきてしまいました。


・仕事のチャンス
DVDに特典映像がつくようになり、またケーブルテレビやスカパーの普及で海外のTV番組が放映される機会も多くなったたため、仕事自体は増えていると言われています。
最初の仕事を頂くチャンスは、文芸翻訳に比べると、多いのではないかと思います。

・収入
それほど多いとは言えないのが現状です。
専業で稼いでいる方は大御所か、もしくは数をこなしているのかな。
昼は会社員や派遣社員をしながら夜と週末で映像翻訳を、というパターンも多いです。

・仕事の始め方
専門の学校に通われるのが一番の早道かなと思います。

字幕にせよ吹き替えにせよ、特殊なルールがありますし、
文芸翻訳のように「作品を持ち込む」という方法は考えにくいので。

卒業後に翻訳エージェントのトライアルを受けられてもいいでしょうし、
学校のなかにはエージェントを兼ねているところもあり、そこから声がかかるケースもあります。(私の場合は後者で、仕事の90%は卒業した学校から頂いています)

映像翻訳を教えるスクールは都内に何校かありますので、
パンフレットを取り寄せ、説明会に出られてみてはいかがでしょう。

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