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おひさしぶり

 飯田橋に、かつては毎週のように通っていたものだが、猫の入院に始まり、母手術、わたし手術、母手術、母手術、妹手術、と病人一家になってからは、めっきり行く回数がへってしまった。
 年に2、3回、とゆ〜・・・・へった、とかいうレベルじゃないだろ。
 あまりに珍しかったせいか、東京創元社の編集部まであがっていったら、ぱっと開いたエレベーターのドアの前で、小浜さんが「中村さんをひさびさに見物しなければ」と待っていてくれました。ありがとう〜。
 さて、今回はディヴァイン担当の、空き巣にはいられたばかりでたいへん悲しんでいる(実話)古市さんと会って話したのですが、「8月に出します」ときっぱり言われました。
「8がつ〜? だって、まだ何もしてないのに」
「6月にゲラをお送りします」
「(まにあうんだろうか)う、うん」
「そのあと、ヴィエッツの続きだそうです」
「(おお、2冊でるのか。これで親からニート扱いされなくてすむよ)わかりました」
「それで、解説なのですが」古市さんの眼鏡が光る。「やはりここは訳者のかたに・・・・」
「はー!?」ちょっと待ってよ〜。「ディヴァイン読んでる人なんて、マニアばっかりじゃん! あたし、くわしくないし〜!!」
「詳しい解説は、前回、法月さんが書いてくださったので、もうそれは・・・・」
「だからじゃー!!」だから、やなんだってば。「あの法月さんの完璧な解説のあとで、書く勇気があると思うのかー!!」
「そこなんですよね〜、問題は」正直に言う古市さん。「だから、続けて作家さんとか、解説者のかたにお願いすると、どういう切り口で書いていただいていいのか・・・・」
「つまり、わたしはワンクッションかい」次の人に、解説を書く勇気を与えるための。
「いえ、かえってそういうニーズがあるかと」
「・・・・」まあ、いい。期待されてないんなら、書きやすいというもの。「ほんとに感想文になっちゃうからね〜」
 急に晴れ晴れと明るくなる古市さん。「いつもの楽しい解説でけっこうです」
 しかし、わたしの書評だの解説だのは、すでに「ミステリーズ!」書評担当の編集さんからも”エッセイ”と呼ばれている代物なのだが。ほんとに、どうなっても知らないよ〜。
 その後も、古市さんは「法月さんの書評の、もとの原稿では、ディヴァインの人生や作風について、ものすごい推理がされていて、名探偵のりりんが炸裂していました」と、ますますわたしの解説を書く勇気をなくしてくれたのでした。
 いまから非常に心配です(笑)。

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